好きなことや得意なことを活かして自宅で開業するという働き方が、ここ数年でスッカリ定着して来ています。
「私の好きなことって何だろう?」「得意なことでお金を稼げたらうれしい!」と考えたとき、お花が大好きだから自宅でフラワー教室を開きたいと考える方は多いのではないでしょうか。
ただし、単にお花が好きというだけでは成功は難しいです。そこで今回は、自宅でフラワー教室を開業するために資格は必要なのか、開業前にどんな準備をすればいいのか、自宅を利用するメリットとデメリットは何かについてお話したいと思います。
フラワー教室開業には資格がいるの?
自宅でフラワー教室を開業するにあたって、「資格」は絶対に必要かと聞かれれば、なくてもいいという答えになります。
たとえば、飲食店を経営するなら、最低でも食品衛生責任者と防火管理者の資格が要ります。もっと極端な例を出せば、医院を開業するには医師免許なしでは不可能ですし、不動産屋の開業には宅建資格が不可欠です。
上記のような職種と比較すれば、フラワー教室の開業には「この資格なしでは開業は不可」という絶対的な縛りはありません。「フラワー教室を始めます」と言いさえすれば、誰にでも、いつからでも出来てしまうのが自宅フラワー教室なのです。
でも、資格はあって困るものではありません。いえ、むしろあるに越したことはないでしょう。
生徒の立場になってみれば、講師の肩書きや実績はとても気になるものです。花好きの主婦が趣味の延長で始めた教室より、名の通った協会の資格を持っている先生の方が、やっぱり信頼できますよね。
また、自分自身がフラワー関連の資格を得るために教室に通った経験は、教える立場になったときに必ず役立ちます。レッスンの組み立て方や進め方を習っているので、開業当初からスムーズに教えることができるはずです。
また資格取得までの行程で様々な技法やスタイルを学ぶので、いざ教えるとなったときにバリエーション豊かな指導ができます。自身が資格者であれば、自宅教室のメニューに資格認定コースを加えることも可能になるでしょう。
以上のことからわかるのは、自宅教室の開業に「資格」は必須ではないけれど、資格を持っていればお得なことがかなり多いということがわかります。
自宅で開業するために必要な準備
・開業届と青色申告承諾書の提出
開業届の提出は、必要な準備のひとつです。開業には「個人事業主」と「法人設立」の二通りがあります。法人の方が社会的信用度は高いですが、煩雑な手続きやある程度の開業資金が必要です。自宅開業の小さなフラワー教室なら、まずは個人事業主としてスタートしてもいいでしょう。同時に「所得税の青色申告承諾申請書」を提出しておけば、確定申告の際に65万円の青色申告控除が受けられ、赤字を3年間繰り越せる特典が使えます。
・花材の仕入れルートを確保
フラワー教室では、当然ながらレッスンの度に生花を用意しなくてはいけません。教室を始めてから、仕入れるお店をあちこち探しているようでは教室運営に支障が出ます。準備の段階で、新鮮な花をできるだけ安く仕入れられる花屋や生花業者とのつながりを確保しておきましょう。
関連業者を紹介してもらえないか、自分が卒業した教室やスクールに問い合わせてみるのもいいですね。
・設備や資材
フラワー教室の場合は、大がかりな機器やインテリアは必要ありません。設備として必要なのは、レッスンを行なうテーブルぐらいでしょうか。これは自宅のダイニングテーブルを代用してもいいと思います。
花器や花ばさみ(これらは生徒さん自身で用意してもらうのも有り)、ワイヤーやテープなどの消耗品は必要数を準備しておきましょう。こちらも卒業した教室やスクールで、関連の卸業者を紹介してもらえる場合が多いです。お得なツテは、大いに利用してください。
・レッスン用のテキスト
毎回行き当たりばったりのレッスンをしていては、すぐに生徒さんの信用をなくしてしまいます。開業までにレッスンメニューをしっかり決めて、それぞれに応じたテキストを準備しましょう。実際には実践練習が主になるので、テキストを開くことはあまりないかも知れません。でも、生徒さんはテキストを見ることでレッスンの流れがつかめるし、予習や復習の際にイメージを作る助けにもなります。
・ホームページやSNSで周知活動
教室を開いても、すぐさま生徒さんが集まってくれるわけではありません。今の時代、インターネットを使った告知は必要不可欠。教室のホームページを作って、さらにSNSと連動して宣伝しましょう。
また、オーソドックスな方法ですが、ご近所へのポスティングや、最寄り駅周辺のお店に置いてもらえるようなチラシもあった方がいいです。最初のうちは、お金をかけて本格的に制作しなくても、パソコンで作った手作りチラシでも十分です。まずは、少しずつでも自分の教室の存在を知ってもらえるよう準備しておきましょう。
自宅教室のメリット
お花に限らず、何かしらの教室を開くとき、「自宅で開催できること」のメリットは大きいです。
では、どんなメリットがあるか具体的に見ていきましょう。
・賃貸料がいらない
もし、自宅以外で教室用のスペースを確保しようと思えば、月々の家賃を支払うことになります。かたや自宅開業なら、別途で家賃は発生しません。固定費の負担はとても大きいので、これがかからないことは自宅開業のいちばんのメリットでしょう。
さらに賃貸契約には、相当額の初期費用もかかります。自宅を利用した教室なら、この初期費用分の金額を他の準備に回すことができるのもありがたいですね。
・移動の必要がない
フラワー教室では、レッスンで使う花材のほかにも、花器や花ばさみ、オアシス、ワイヤーやテープ、そしてテキスト類など、多くの資材や道具が必要です。自宅以外で教室を開けば、レッスンの度にこれら全てを持ち運ぶ必要が出てきます。
荷物の運搬は、想像以上に大変なものです。車を所有している方なら、「車で運ぶから楽チン」と思うかもしれませんが、そうなるとガソリン代や出先での駐車場代を捻出しなくてはなりません。
どこへも出かけず、家に居ながらにして生徒さんを待つだけの自宅開業は、移動面でもメリット大ということです。
・子育てや家事との両立が可能
教室までの往復の移動がない分、子育てや家事との両立がしやすいというメリットもあります。
好きなことを仕事にするのはいいけれど、子育てや家事を犠牲にしては本末転倒。その点、自宅開業のフラワー教室なら安心ですね。
自宅教室のデメリット
何ごともメリットがあれば、デメリットも必ずあるもの。自宅フラワー教室も然りです。
続いては、自宅で開業することのデメリットについて書いてみます。
・気持ちの切り替えが難しい
自宅を仕事場にするわけですから、気持ちを仕事モードに切り替えるには、それなりの強い意志が必要になります。
つい今しがたまで家族と寛いでいたムードを引きずってしまったり、レッスン中に子どもが乱入したりする可能性もあるのが自宅教室のデメリット。自分自身がオンとオフをしっかり切り替えると同時に、家族の協力も必要になってきます。
・掃除や整理整頓に気をつかう
生徒数やレッスン数が増えるのは嬉しいことですが、その分だけ家の中を他人に見られる率も増えるわけです。美しさを表現する花の仕事をしているのに、家の中が乱れていては説得力に欠けるというもの。マメなお手入れが必要になるので、掃除や整理整頓の負担は増えることになるでしょう。
でも、常に家の中がキレイに片付いているのは、全くのデメリットとは言えないかも知れませんね。
・仕事場と認められにくい
教室運営が順調に行けば、いずれ融資を受けて事業拡大となるかも知れません。その際、自宅教室というステイタスは、審査面で少々マイナスです。なぜなら、純然たる仕事場と認知されにくいからです。
また確定申告においても、自宅教室の場合は、仕事場の経費を100%認めてはもらえません。住居使用との按分にするのが通例になっています。
開業する際の心構え
自宅でフラワー教室を開業するには、事前にチェックすべきことは盛り沢山です。資格のこと、準備のこと、さらにはメリットだけでなくデメリットについてなど、いずれも外せないポイントです。
でも、何よりも大切なことは、講師であり事業主であるという覚悟ではないでしょうか。やるからには必ず成功することをめざして、自分の教室を選んでくれた生徒さんに後悔させない教室運営を心がけましょう。