バッグに使われる素材の1つとしてメジャーなのが帆布(はんぷ)です。「一澤信三郎帆布」「倉敷帆布」など、ブランド名にもなっているくらいですが、そもそも帆布ってどんな素材なのでしょうか?帆布を使ったバッグの使い勝手はどうなのでしょうか?帆布という素材に注目してみたいと思います。
●帆布ってどんな素材?
帆布は綿や麻、真麻を縦と横交互に浮き沈みさせて織り込む平織りして作られる厚手の布です。その名前のとおり、船の帆の素材として使われてきました。
今では帆がある船はあまり見られなくなりましたが、バッグや靴をはじめ、油絵用のキャンバスや、テント、競走馬用のゼッケン、帯芯、相撲のまわしなど、多くの製品に使われています。
帆布の歴史は古く、古代エジプトで亜麻帆布が初めて作られて、船の帆に使われていたと言われています。
日本では織田信長が船の帆に帆布を使ったと言われていますが、記録として残っているのは江戸時代の発明家、工楽松右衛門が作った「松右衛門帆」です。それまで日本の船にはわらやい草などで編んだ「むしろ」や綿の布をつなぎ合わせて帆に使っていましたが、作るのに手間がかかる上、耐久性も低いという問題点がありました。松右衛門帆が出てから日本でも帆布が急速に普及していくことになります。
明治時代にはお酒や醤油を作る際のコシ布、貨物のシートやテント、道具袋や小売袋、手提げかばんなど、さまざまな用途に応用されるようになりました。昭和30年代には国内での帆布の生産量がピークとなり、工業用品から日用品までありとあらゆる場所に帆布が使われてきました。
しかし、化学繊維が台頭し、アルミボデーを備えたトラックや貨物列車が普及してきたことから、やがて工業用としての帆布のニーズは無くなってきました。一方で、その丈夫さや素材感から日用品の素材としては未だに根強い支持を集めています。
日本の帆布の7割が岡山県倉敷市の郷内地域で作られています。古くから綿花の栽培が盛んで、高い撚り糸技術が今に至るまで伝承されているのです。
●帆布の特徴とは?
続いて、素材としての帆布の特徴を見てみましょう。まず一番の特徴はやはり頑丈さです。航海を何日も続ける船の帆や、荷物を載せて走り続けるトラックや貨物列車の幌、重い荷物を支える工業用の袋として使われてきた素材だけあって、頑丈さは一級品。ちょっとやそっとの重量で破れることはありません。
学生が使うカバンにも帆布が使われていますが、重い教科書をパンパンに詰め込んで毎日学校に通ってもびくともしません。伸縮性があまりないので、型崩れなども他の布と比べると少ないです。
さらに布でありながら耐水性が強いのも大きなメリットです。もともと帆布は水をあまり通さない性質がありますが、完全防水であれば水が中に染み込んで中身が濡れてしまうということもありません。こうした防水性が高いからこそ、潮風にさらされる船の帆に利用されてきたのです。
また、仮に濡れてしまったとしても色移りや色落ちが発生するということもほとんどありません。
風合いの良さも帆布の魅力です。ナチュラルで素朴な風合いはとくにカジュアルシーンにぴったり。見た目からも質実剛健な雰囲気を感じられます。長年使っていると繊維もやわらかくなってきて、手に馴染む感じを味わえます。
一方、帆布にはデメリットもあります。他の布と比べて伸縮性がほとんどないため、手触りがゴワゴワしています。また、容量以上の荷物を詰め込むということはできません。形も変わりにくいので、異形状のものを運ぶのには不向きです、ですから、なるべく容量が大きいバッグを選びましょう。
素材が分厚いので他の布製品と比較するとどうしても重さを感じます。とはいえ皮革製品と同じくらいなので、革の製品を使っている方ならそれほど気になるレベルではないかと思います。
また、見た目がカジュアルなので、どうしてもビジネスなどフォーマルなシーンには不向きです。
ただ、デメリットを大きく上回るメリットもあり、「重い荷物を運ぶ機会が多い」「何年でも使える頑丈なバッグが欲しい」という方には帆布はぴったりの素材です。
●帆布のバッグってどんなものがあるの?
やはり見た目がカジュアルなので、ビジネスバッグに使われることはあまりありません。着替えなど重い荷物にも耐えられるボストンバッグやリュックサック、本や教科書などがたっぷり入るトートバッグなど、やはり重いものをたくさん入れることが想定されるバッグによく使われています。
私も学生時代に帆布の学生カバンを使っていましたが、重い教科書を詰め込んで3年間通学しても破れるどころがキズ1つ付きませんでした。帆布でできたトートバッグも10年以上使っています。
非常に頑丈で、素朴な素材感も味わえる帆布のバッグは、実用性もデザイン性も兼ね備えた、質実剛健なバッグなのです。